小鳥遊 桜

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【この世界は】


この世界は、退屈だ。

もちろん、楽しいこともある。
けれど、やっぱり、退屈。


クラスメイトは、毎日毎日同じような会話ばかり。
最近のドラマの話。好きなアーティストの話。
嫌いな奴の話。根拠の無い噂話。

本当に、くだらない。

教室に行っても、何もないから
私は教室には行かずに屋上…に行きたいけど、ドラマやアニメのようにドアが開いてる事はなく、いつも屋上のドアの近くの階段に居る。
ここは誰も寄り付かない。
なんか、変な噂話があるらしい。
まあ、誰も来ないから、私はここが好き。
そこで、色んな本を読んでいた。


今日も、いつもの場所に行って、本を読んで、適当な時間に帰ろう。

そう、思っていた。のに。
先客が居た。
『あ。もしかして…ここ使う?』
ここ使うっていう意味がわからないけど…なんか、制服新しいから、後輩なのかな。
「いや。今日は、いいや。帰る。」
『えーっ!待ってよ!お話しようよー!』
「ちょっと、声大きい。今、授業中でしょ?」
女の子は、ハッとして、小さな声でごめんねって言った。

色々と話しを聞くと、この子はクラスに馴染めてなくて、いつも1人で教室に居て寂しくてここにいるらしい。

目がおよいでた気がしたけど…気にしないようにしよう。

言いたくないことは、仲良くなったとしても、無理に聞かない。無理に聞いた所で、この子が苦しむだけだから。

『ねーねー。先輩。お話しよ?』
…と言われても。初対面で後輩で何を話すというの。
色々と悩んでいると、女の子は色々と勝手に話してきた。
学校の近くにいる猫の話、放課後の部活生の頑張ってる声、図書室で見つけた面白い本のこと。


……マシンガントークって、こんな感じなんだろうなって思った。本当に、すごい。
聞いてるだけなのに、疲れた。

それから、女の子は毎日待ってた。
毎日毎日、違う話題で会話をしてくれた。
…おかげで、ちょっとは、楽しかった。

ある日。いつも通り、女の子と話しをしていた。
『えーっとね、今日は……』

『貴女、今日は、全校集会でしょう?』
先生らしい声が聞こえた。
私からは、見えなかったけど。
『あっ!忘れてましたー。ごめんなさい!すぐ行きます!』
『ねえ、貴女、誰かと話してた?』
『えっ?気のせいですよー。先生。ちょっと、片付けてから行きますので、ちょっと先に行って待っててください!』
『わかったわ。すぐ来てくださいね。』

先生がいなくなったことを確認して、女の子は私の方を向いて、笑顔で
『ちょっと待っててね。先輩は、この近くしか、動けない…よね?』
…?何を言ってるの?
『だって、先輩。地縛霊ってやつでしょう?』

後輩の子から話しを聞いた。
……私は、どうやら、ここの階段で。

女の子は、見える人みたいで、私の噂話を聞いてここに来たみたい。

色々と聞きたいことがあったから、聞こうと思ったら

『あっ!ごめんね!今から体育館に行かないと!ちょっと待っててね。お話はまたあとでー!』
と言って、体育館へと走っていった。






全校集会終わったーっ!
急いで行かないとね。
何を話そうかなー。
お花の話とかファッションの話とか最新の本の話とかいいかも!
よーし、行こう!

それに、〝クラスに馴染めてなくて、いつも1人で教室に居て寂しくてここにいる〟って嘘ついたこと、先輩に謝らないと!
本当は、先輩が気になって気になって仕方なくて一緒に居たって言わないと。


いつもの場所に、とーちゃく!!

「…あれ??居ない?先輩、帰ってきましたよー!」
もしかして…自分のことを知ってしまったから、消えちゃったのかな。
ちょっとだけ、寂しいな…。

先輩、幸せだったかな。
私、大きな声で話し出すと止まらないからウザかっただろうな…

「あれ?いつも先輩が座ってた場所に何かある。」
拾って見てみると、小さな文字で

〝ありがとう。楽しかった。〟

と書いてあった。

「……えへへ。私も楽しかったですよ!先輩!」

この世界は、色々な人や物があって、みんな大変なこと辛いことだらけだけど、みんな優しくていい人だよね。

1/16/2023, 1:31:31 AM