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『誰よりも、ずっと』


あるところに誰よりも、ずっと国民のことを考えている王さまがいました。

「どうしたらより良い国になるだろうか」

王さまは常に考えていましたが、どうしたら良いのかわかりません。
なので王さまは他の人に聞いてみることにしました。

「神に祈り、正しく生きていれば神が見守っていてくださいますよ」

大司教は神へ祈りながら答えました。
王さまもすぐに大司教のマネをして祈り、国民全員に朝晩必ず神へ祈りを捧げるよう言いました。
国民はやる事が増えて負担になりましが、王さまへは不満を言うことができません。

「近隣国からの侵略に備え、軍事を拡大するべきです」

宰相は大きな世界地図を見ながら答えました。
王さまはすぐに国の周りに高い壁を作り、兵にそこを守らせるよう言いました。
国民は高い壁に囲まれ閉塞感を感じましたが、王さまへは不満を言うことができません。


「もっと芸術に触れられるようにすれば、心が豊かになるわ」

王妃はガゼボでお茶を飲みながら答えました。
王さまはすぐに大きな美術館を建て、そこには素晴らしい芸術品をたくさん飾るように言いました。
国民は美術館の入場料を払うくらいなら、もっと良い物を食べたいと思いましたが、王さまへは不満を言うことができません。

「あぁ、今日も国民のために良いことが出来たぞ」

王さまは上機嫌で眠りにつきます。
そして今日も何人もの国民が食べるものもなく、死んでいきました。

4/9/2024, 12:58:19 PM