未知亜

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「今年、秋風って吹いたのかな?」
 なんか、気づいたらもう冬じゃん! と、歩きながらスマホを取り出して侑子が口を尖らせる。
 確かに、ここ数日の気温の下がり方は異様だった。つい数週間前まで、夏のじめっとする気持ち悪さに文句を言っていた気がするのに。
「こうも乾燥してくるとさ、認識してくれなくなるよね、指紋」
 液晶画面に押し付けていた親指を諦め、侑子はポケットから右手を出して番号を打ち込み始めた。
 でもね、足元で枯葉の音をさせるこの風が、手袋を片っぽずつにできそうな冷たい風が、あたしは結構好きだったりするけど。


『秋風🍂』

10/23/2025, 9:20:46 AM