『君の目を見つめると』
他人と目が合うと、すぐに目を逸らしてしまいます。
自分の醜い心や行動を見透かされているような気になって、どうにも落ち着かないのです。
誰かと向き合って話をしていても、視線はいつも相手の肩越しや、テーブルの木目、あるいは宙を舞う名もなき埃へと逃げてばかりいます。鏡に映る自分の目でさえ、長く見つめ返すことはできません。「優しい人だね」と誰かに微笑まれるたび、その言葉が冷たい棘となって胸に刺さります。本当の私は、他人の些細な幸せにひっそりと嫉妬し、保身のために小さな嘘をつき、見栄を張る、どうしようもなく卑小な人間だからです。
瞳が心の窓であるならば、私のそれは、決して他人に覗かせてはいけないひどく濁ったガラスでできているはずです。
だから、外の世界は私にとって、常に息を潜めて歩くべき場所でした。無数の視線という名の刃から身を守るため、分厚い鎧を着込み、愛想笑いという仮面を被り続ける。それはひどく体力を削る作業であり、一人になれる場所に帰る頃にはいつも心が擦り切れています。
けれど、この場所だけは違います。
静かな空間の中で、私の気配に気づいて顔を上げる存在。ビー玉のように澄み切った、深く透明な瞳。
その目に映るのは、私が外の世界で纏っている肩書きや、ひた隠しにしている打算ではありません。ただ「私がそこにいる」という事実だけを、一切のジャッジメントなく、まるごと受け入れてくれる静かな光です。私がどれほど自己嫌悪に塗れていようと、その瞳は私を責めたり、値踏みしたりすることはありません。ただ真っ直ぐに、私の存在そのものを肯定するように見つめ返してくれます。
他人の視線は、いつも私を暴き、裁こうとしているように感じて怖くなる。
自分の内側にある淀みを突きつけられるようで、ひどく息が詰まる。
それでも君に見つめられると違うのです。
4/6/2026, 3:09:41 PM