NoName

Open App

光り輝け、暗闇で


再会の時

空の果て、宇宙というものに憧れていた。輝く星たちに囲まれて無重力の空間を漂い、その旅の果てに“あの子”と再会する。それが私の夢だった。

「実は私宇宙人なんだ。」
彼女は朗らかに、けれど少し寂しそうに私に告げるのだ。何度も見た過去の記憶、青くて暑い高校時代の夏。
彼女は不思議な人だった。まるで恒星のような輝きと魅力を持つ、私の大切な人だった。
私と彼女は幼馴染で、いつでも一緒にいる。けれどいつからかは誰も覚えていない。
先生も知らないような知識や言語を知っている。けれど、最近の出来事や流行りは知らない。
彼女はきっと私が好きで、私のことを沢山知っている。けれど、私は彼女の事を何も知らない。
それでも、私達はいつでも隣にいた。そう、彼女が自分の秘密を話してくれるほどには。

事の始まりは1977年、NASAが打ち上げたとある惑星探索機。宙の人々へのメッセージとして金色のレコードをたずさえ遥か彼方へ飛び立ったソレ──ボイジャーは、今も私たちの上を旅している。
彼女はボイジャーと出会って初めて、人間という存在を知ったそうだ。正確には、ボイジャーの持っていたゴールデンレコードを解読して。ソレには地球上の様々な言語・文化・音楽が詰められている。彼女はその小さな金色のプレゼントを何回も見ながら、遠い遠い宇宙の先から、このちっぽけな星へやってきたらしい。
だから彼女は、沢山の知識があってもそのレコードに記されていない直近の出来事は知らなかった。

彼女は宙を旅して生きる存在らしい。少なくとも、一つの星に何年も住んでていいような存在じゃないそうだ。
彼女が私に秘密を告げたのは信頼の証であり、そして別れの予感でもある。ボイジャーに導かれここへやってきた彼女は、もうすぐその命尽きる旅人を連れて更に違う星へ旅立つそうだ。
またここへ帰ってくるかと聞いた時、彼女は曖昧な微笑みしか返さなかった。この広大な宇宙でここに帰ってきた時一体どれほどの時間が経っている事だろう。それ理解しているからこそ、言葉を返さなかった。

彼女がここへ帰ってくる前に、きっと私は死んでしまう。けれど、もう二度と会えないなんてそんなのはごめんだ。
だから私は宇宙へ旅立つ事にした。かつてのボイジャーと同じように……とは行かないが、数多の試練と試験を乗り越えて、ただ会いたいと言う一心で宇宙への切符を手にした。
彼女を見つけられる確証なんてないけれど、きっと彼女はあの頃のように光り輝いている。私がその光を覚えている限り、どんな暗闇でも見つけられる。

だからどうか、待っていて。私がその光に辿り着くその日まで、あなたを見つけるその時まで。








5/16/2025, 1:03:00 AM