【⠀No.8 海へ 】
太陽の光で美しく輝いた海は、よく映える。
そこに君がいるから、もっともっと美しい写真が撮れる。
真夏の空の下、涼しげに真っ白なワンピースを揺らし、
長い真っ黒な髪をなびかせている君。
夏らしい麦わら帽子もよく似合っている。
君がいるところだけ切り取られたみたいに綺麗で、
辺りの空気が澄んでいるように感じた。
写真家である僕は撮影用のカメラを取り出す。
つくりものじゃなく自然体な君の時間を、このカメラで
切り取りたい。
白い足で海水を少し蹴る君。
潮の香りを嗅覚でいっぱいに感じると、飛び散った海水が
宙へ舞い、くしゃっと笑う君を視覚で捉えて、体中に響くような、美しい波の音を聴覚で楽しむ。
「ね、すごく綺麗だし、水気持ちいいよ。」
嬉しそうに近寄ってくる君。
今、嗅覚には君の香りが、視覚には近くで見る君の顔が、聴覚には君の透き通った声がプラスされたよ。
「海来て私は楽しいけど、ちゃんと楽しんでる?」
「うん。だって、君がいるから。」
そう言うと少しポッと赤くなる君。
えへへ、と照れ笑いをすると、彼女は海へ戻っていく。
その様子も一部始終、僕がこのカメラと脳に保管しておくから。やっぱり、海っていうのは素晴らしいものだ。
真夏の遊びといえば、やはり海。
僕自身アウトドアではいないので気は進まなかったが
君の美しい姿を見て、来てよかったと思えた。
ここを、毎年君が楽しんで、僕が写真家としての腕がどれだけ上がったのか確認するところにしよう。
また来年もきっと、海へ。
8/23/2024, 6:13:49 PM