くじらもち

Open App

「この目が一番大切なものです。」と客は言った。

店主は「コレに見合うほどの価値はあるのかね?」

と聞いた。客は「この店は、客の大切な物の、思い

出を買い取る採点基準にするそうですね?」

「この瞳は、私の妹のものです。事故がきっかけで

亡くなってしまいましたが、彼女が生きてるときに

その瞳を移植しました。」と。

「それで?」と店主。客は「この瞳にはかなり思い

出があるし、色も珍しいから買い取ってくれるかな

って思って。」「…はぁ。貴方本当にそれを買い取

って欲しいと?」店主は言った。「そうです。」と

客。「辞めておきなさい。」店主は言った。「大切

な妹さんの形見のようなものでしょう。それを売っ

てまで必要なものなんてきっとない。」「そ、そん

なこと言ったって、辛いもん。だ、だってこれがあ

るから忘れられないんだもん。」と、「これを捨て

ることが出来れば、き、きっと忘れられる。あの子

を、き、記憶から消したいのぉっ!」客は泣き出し

てしまった。きっと、捨てることができても、忘れ

られない。捨ててしまったら罪悪感に苛まれて仕舞

うだろうに。

【大切なもの】



4/2/2023, 11:10:09 AM