Theme:冬になったら
コートを着て外出する日が増えてきた。もう、冬が近いのかもしれない。
冬になったら、今年もまた花を咲かせてくれるだろうか。
彼女から貰った、クリスマスローズが。
彼女は花が好きだった。
病室の窓から見える公園に咲く、四季折々の花をいつも眺めていた。
彼女が喜んでくれたらと、俺も見舞いに行くときはいつも季節の花束を持っていった。
行きつけの花屋の店員には、さぞ花が好きなんだろうと思われていたかもな。
見舞いに鉢植えは縁起が悪いからといつも切り花を持っていっていたが、きっと彼女は鉢植えの花が欲しかったんだろうと思う。
クリスマスローズの世話をしながら、ふとそんなことを思った。
こうやって日々の成長を楽しむことができるんだから。
彼女が亡くなったのは冬の日だった。
葬儀の帰り、いつもの花屋につい足を向けてしまった。
そこで目を惹いたのがクリスマスローズだった。
「冬は花が少なくなって寂しい」と彼女はいつも言っていたから。
俺はそのクリスマスローズの鉢を購入し、彼女の写真の隣に飾った。
冬に咲く花が、彼女の元にも届くといいなと思いながら。
形見分けに貰った彼女の植物図鑑には、クリスマスローズの栽培方法も載っていた。
クリスマスローズは多年草で、上手に育てれば翌年も花をまた咲かせてくれるらしい。
今年も冬になったら、また花を咲かせてくれるだろうか。
11/17/2023, 12:17:22 PM