宮沢 碧

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2024/01/03


『ボケと梅の花』

                     宮沢 碧



 新春の神社、緋色の花がカップルを見守っていた。

「なんだった?」

 少しばかり、口角が上がったのを見届けて翔太はみちるに声をかける。

「中吉だった。」

 覗き込めるようにみちるが御神籤を広げて見せると、一方で翔太はテストでも見せるかのように摘んで自分の分を広げる。

「いいね、俺、吉」
「いいじゃん。そんなに変わりないよ。」

 小首を傾げて笑ったらみちるの頭の耳当てがずれてしまった。赤い小さな花のような耳当てをそっと直してあげると、御神籤をポケットにしまってそのまま翔太はポケットから両手を出さずにくるりと本殿を背に歩き始める。

「行こっか。」

 大学に上がって、それでも離れずになんとか付き合えて半年が経とうとしている2人である。ジャリッジャリッと白い玉砂利を踏む音をさせながら、みちるを振り返らずに翔太は少し大きめの声で言う。

「今年旅行行こっか。」
「突然なに。」
「今年の俺の抱負。」

 すごく大人の男の声がした。

 でも振り返って見せた翔太の顔が思った以上に子供っぽくて、みちるは笑い出してしまう。

「いい子にしてたら叶えてあげるね。」
「叶えてもらえる自信があるね!今年の抱負は?」

 みちるは頑として首を振る。

「言わないよ。言ったら願い事叶わないって言うじゃん。」
「?」

 翔太の眉間に皺が寄る。この突拍子のない話はどこから来たのか。脳の皺から答えをかき出す。

「…叶わないっていうのはお願いごとだろ。」
「うっわ、間違えた!恥ずかしい。忘れて、忘れろー!」

 梅か木瓜か。寒枝を彩る花にじわじわと春がほころんでいる。



お題 今年の抱負


昨年中はどうもありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。
平和に楽しく、昇竜のようにお互い活躍いたしましょう。
皆様と素晴らしい縁が広がりますように。
世を鑑みて、控えめに新年のご挨拶とさせていただきます。

宮沢 碧

1/3/2024, 10:45:09 AM