【昨日へのさよなら、明日との出会い】
30日間無料お試し!家族アンドロイドと一緒に暮らして見ませんか?
えみのママはぜんぜん家にいない。えみはいつも1人でおるすばん。パパはよく知らないの。
「えみちゃん。ママ忙しくてなかなか家に居られないの。ごめんなさいね。代わりと言ってはなんだけど、家族アンドロイドっていうものがあるらしいの。お試しで頼んでみたから、しばらくはそれと遊んでちょうだい。」
アンドロイドなら知ってるよ。まどの外を見るとたくさんいるもん。えみの家にもアンドロイドがくるの?やったー!
翌日
「来たみたいね。設定だけ済ませたらママはお仕事に行ってくるわね。仲良く遊ぶのよ。」
わあ、動いた。ママ!この子、人にすっごく似てる!ママ?もう行っちゃったの…。
「おはようえみ。私はミラ。今日からあなたの家族になるの。よろしくね。」
えみだよ。ミラちゃん一緒に遊ぼう。
「わかったえみ。一緒に遊ぼう。」
あのね。ママはいつもお仕事が忙しくてぜんぜん遊んでくれないの。だけどえみは大丈夫なの。ママが頑張ってるって知ってるから。
「えみ。あなたの年齢は時間を長く感じる。そんな時期に1人でお留守番をするのはとても寂しかったでしょう。ミラはあなたの家族です。いつでも一緒に遊ぶことが可能です。」
夜
「えみちゃん。ただいま。お利口にしてた?それと、アンドロイドに問題なさそうかしら。」
この子はミラちゃんだよ。今日はいっぱいミラちゃんと遊んだの。
「あら、そうだったの。気に入ったみたいで良かったわ。もう遅いわ。食事を済ませて早く寝ましょう。」
「おかえりなさいお母さん。ミラは家事全般を行うことも可能です。お母さんの役に立てることでしょう。」
「さすがミライ社のアンドロイドね。お母さんっていうのは違和感あるけど、家事をしてくれるならお願いしようかしら。」
15日目
「ミラ、食パン焼いておいてくれるかしら?えみを起こしてくるから。」
「わかった。お母さん。」
ミラちゃんが来てから、少しだけママがえみと遊んでくれるようになった。朝のちょっとした時間。寝る前の数分。それでも嬉しい。とっても幸せ。
30日目
「今日でお試し期間はおしまいね。えみちゃん。ミラとは今日でお別れなの。」
ミラちゃんいなくなっちゃうの?なんで?家族なんでしょ?
「えみ。ミラは家族です。ですが、ミラは元いた場所に戻らなければなりません。あくまで今の私はお試し用の機体。製品版には遠く及びません。ですから、現状を存続させることは不可能です。」
えみはママとミラちゃんと一緒がいいの。お別れなんていやだよ。
「えみちゃん。ママもミラがいなくなったら寂しいと思うの。だけど、製品版のミラは高額なの。だからね、本当にミラと一緒にいたいか聞こうと思ったのよ。それに、これからはママね、早く帰れるようになるのよ。」
それでもミラちゃんと一緒がいいに決まってるもん。
「実はね、ミラが買えるようになるまで遅くまで働いてお金を貯めてたの。そんなときにこのお試しを見つけたのよ。これでえみちゃんがミラと一緒にいたくないのなら、別のものにお金を使おうと思っていたわ。だけど、そんなことはなかったわね。それにもう、ミラは家族だもんね。」
次の日
ミラちゃんは昨日戻って行ったの。ママは見た目が変わっても記憶は一緒って言ってたの。
さようなら、昨日までのミラちゃん。
そして、明日になればきれいになったミラちゃんに出会えるの。
えみの家族はえみとママとミラちゃんだから。
昨日までの日々とはさよならした、新たな出会いのお話。
5/22/2023, 4:16:55 PM