ぬるま湯の心地良さを手放すことができずにどこか欠落した日々をだらしなく続けてしまったせいで、生きる明瞭さを失った。いやきっとそれだけではない。一体どれほどのものを犠牲にしたのだろう。気づけば、普通にできていたことすらできなくなってしまっていた。周りを見渡せば、劣等に苛まれる。そこでやっと気づいた。僕は良いように扱われていただけだと。あの子もあの人も僕に対してあたたかな感情を持ち合わせてなんかいないのに、何度も愛を囁いて、束の間の優越を僕に与えた。すべては僕を陥れるための甘い罠だったのだ。弱る僕を見て楽しんでいたんだろう。絶望と劣等に苛まれる殺伐とした日々に生かされているだけの空っぽなクラゲになるくらいなら、なにも気づくことができないただの阿呆で居る方が数億倍マシだった。僕はどうしていつもこうなんだろう。誰かの手のひらで転がされることしかできない。馬鹿にされ、笑われることしかできない。なんて滑稽なのだろう。そういえば、名前も知らない誰かが僕を指さして「お前は生まれながら道化師だ」って声高らかに笑っていた。それならあの子がくれた言葉はなんだったんだ。あの人の温もりはなんだったんだ。あの子やあの人の涙はなんだったんだ。美しい花のような笑顔でさえも僕を面白くも哀しい道化師にするためだけに魅せたものだったというのか。ともすれば、なにを真実と捉えて生きるべきなのか僕にはもうわからない。与えられた気になって悦んだ価値はすぐに取れる鱗だった。それに気づかず、浸っていた優越もニセモノ。無価値の中で泳ぎ続ける僕をどれだけの人が笑っていたのだろう。劣等に塗れすぎた僕は僕自身すら愛すことは困難を極めていて、目を背けてしまう。次に目を覚ましたときはどうか劣等の類いを感じない人生を歩めていますようにと、わずかな希望を抱きながら瞼を閉じる。
7/14/2023, 9:02:03 AM