未知亜

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 もう寝ようかなんて言い合った直後だった。スマホを手に「今夜じゃん、今じゃん」と呟いた君がおもむろに窓辺に寄る。
ㅤ夜更けの月がどちらに出てるかなんて二人とも全く知らなかった。家じゅうの窓から代わる代わる、僕らは空を見上げて回る。

「こっちも違うか」
ㅤ君の離れた窓を遅れて覗き込めば、予想よりも高い位置で丸い月が出迎える。
「あったよ! ほら!」
 大きな声を出した僕に、君が慌てて肩をくっつけた。

 それはついこないだの皆既月食。
 まん丸だった月はいま、細筆でひと撫でしたみたいに儚げな弧を描く。
「月、見える?」
ㅤ笑うとすうっと細くなる君の瞳を思い浮かべて、スマホの向こうに僕は話しかけた。

『君と見上げる月……🌙』

9/14/2025, 3:33:42 PM