『無色の世界』
僕は無色の世界を生きている。
別にその事について何も感情はない。
気が付いた時にはそうだったから、逆にそれ以外の世界を知らない。
「今日もあったかい、いい天気だね」
声が聞こえた。
これはママ。
いつも優しい声で僕に話しかけてくれる、大好きな人。
大好きなのに僕はうまく喋れなくて、つい地団駄を踏んでしまう。
「今日も元気だね」
僕の気持ちはちっとも届かない。
「イタタタ……」
急にママの声が変わった。
何かが痛いらしい。
こんな時、僕は無力だ。
何もできなくて、ただ僕も苦しい思いをするしか出来ない。
「痛い痛い痛い」
知らない親切な人が病院に連れて行ってくれた。
ママは痛みが強くなっているのか、さらに大きな声で訴える。
ママが心配、苦しい。
それからすぐに先生や色々な人が来て、よくわからない何かをしてる。
ママを助けて。
僕の声は届かない。
「頑張りましたね、元気な男の子ですよ」
そして僕は光の世界に生まれた。
4/18/2024, 12:51:10 PM