「ズボンのチャック開いてるよ」って伝えたい。
平日昼間、春の公園はのどかであたたかく、ブランコでは幼児がキャッキャして遊んでいる。
だからこそ彼に伝えたい。でも。
彼はまっすぐ私の目を見てこう言った。
「やっぱり俺たち、別れた方が良いと思う」
こんな別れ話の最中に言うのもなあ。
でも早く言わないと、恥ずかしい思いをするのは彼なんだし。こういう時は多少空気を読まない方が良いかもしれない。
「あの」
「分かってる。俺だって辛い。でもこれ以上好きになったら、どうしていいか分からなくて」
「あの、チャック」
「もう一度友達に戻らないか。それくらいの関係の方が、きっとうまくいく」
「チャック〜」
さりげないチャックをあげる動作をしてみるも、彼は話に夢中で気づかない。
今日は水玉柄だなあ。
まあ別れ話だからな。でも1ヶ月前もこんな話をして結局こうしてよりが戻ったんだから、たぶん大丈夫。
どこかでウグイスが楽しげに鳴いている。
【お題:伝えたい】
2/13/2024, 10:02:29 AM