てふてふ蝶々

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とっぷりと日は暮れて、幼稚園や小学生くらいの子供だったらそろそろ布団に入って眠りにつく時間。
私は蛍光灯が眩しい塾の窓から自宅のある住宅地を眺める。そろそろ授業が終わりそうだ。
10年ほど前に新興住宅地として作られた住宅が段々畑の様に並ぶ家並み。
私も私の両親とあの家並みの一つに住んでいる。
駅までバスで七停ほど。ちょっと遠い。
だから家から駅を見ると遅い時間になっても煌々と灯りが見える。私のいる塾はその灯の中の一つ。
私の家はきっと灯りはついてない。
塾に通う前は私が留守番していたからついてたと思う。
家に居たから自分家の灯りがついてるところを外から見た事はない。
父も母も忙しい人で家にいる時間はほとんどない。
一人っ子な私はいつも留守番だったから、暇だしやる事ないしでダラダラとスマホ見たりゲームしたりしてた。
口煩く注意されない代わりに、成績は最底辺を這いずっていた。学校ではおバカキャラってほど陽キャにもなれず、今時、ヤンキーなんて見たことないから、そんな仲間もいない感じなんだけど、もうすぐ高校受験って事で塾に通う事になった。
私の成績にも無関心な両親だけど、塾に通いたいと言った時も何もいわず通わせてくれた。
将来の夢なんてないし、勉強は嫌い。
やらなくていいならやりたくないのが本音だけど、中卒で働けって言われても困るから高校行こうかなって思っただけなんだけど、家で勉強した事ないし無理で、塾。
塾に入って良かった事は、夜に1人で家に居なくていいって事。最初はゲームとかYouTubeとか見れないの嫌だなとか思ってたけど、慣れたら別になくてもいいかなって思うようになったし、学校以外の同級生と話するのも面白い。
だから結構、塾にいる時間が好き。
だから、塾が終わって暗い家に帰るバスが嫌い。
明るい所からどんどん暗いところに行く感じが嫌い。
ずっと人がいる明るいところにいたいのに。
もうすぐ授業が終わって、バスに乗る。
そしたら、私は家に着いて、電気をつける。
あの、暗い家並みの灯りの一つになる。
そしたら、誰か私の灯りを見てくれるのかな?

7/9/2023, 7:30:32 AM