霜月 朔(創作)

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もう一つの物語



昔むかし、ある所に、
一人の男の子が居ました。

親に捨てられたその子は、
学も無く、金も無く、
今日を生きるために
ピエロになりました。

哀れなピエロは、
どんなに仲間に虐められても、
殴られても、蹴られても、
ピエロの仮面で涙を隠し、
笑って生きていました。

辛さを堪え、
笑いを演じなければ、
今日の食事さえも、
得られないのです。

ピエロは生きるため、
人々の笑顔を作りました。
けれど、ピエロ自身は、
自分の笑顔を、忘れてしまいました。

ある日、
ピエロの心は闇に沈み、
魂を悪魔に喰われました。

冷たい闇の中、
ピエロは仲間を見つけました。
世間に見放され、
蔑まれた人達でした。

それでも、ピエロにとって、
それは初めての安らぎでした。
そして、漸く。
彼は心からの笑顔を、
思い出したのです。

そして、彼は。
仮面を外し、
ピエロではなく、
一人の男の子に戻りました。


そして――
ここから始まるのは、
もう一つの物語。

10/29/2024, 6:32:36 PM