猫頭魚子

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小さい頃は雪が降ると嬉しかった。新雪に足跡をつける楽しさ、ゴムを噛んだような足音、あの頃は雪は幸福の知らせだった。しかし、私はいつからか雪を鬱陶しく思うようになった。冷たさや寒さが体に痛みを与え、ただでさえ億劫な仕事への足取りを止めるそれを誰が好きになれよう。

ワンッ

こいつがいたか。仕事終わりに大雪にあたり一時間ほど雪かきに時間を取られた私にポチが吠えてくる。家の前に積もった新雪にはポチがたくさんの足跡を残していた。ポチは今年で9歳になる大型犬だが、雪が好きなようで小さい頃から雪が降ると嬉しそうに尻尾を振って庭を駆け回っている。

ワンワンッ
「分かったから…分かった…」

ポチは疲れて帰ってきた私を見て駆け寄ってきた。外暮らしのせいで冷えた舌で嬉しそうに私の顔を舐めてくる。冷たいし痛い。でも嬉しくて、涙が溢れてきた。


ワンワンッ


分かっている。これは夢だ。目が覚めてほしくないと思いながら、伝う涙を抑えられずポチを抱きしめた。そして、目が覚める。ポチは今でも私のデスクの上で額縁に入って笑っている。


雪が降ったよ、ポチ。


【雪を待つ】

12/15/2024, 11:28:05 AM