『1年後』
空港から飛び立つ飛行機を見送ったのは1年前。海外出張へ向かった彼からは長くても2ヶ月ほどと聞いていたから一緒に行かなくてもいいだろうと考えていたけれど、やがて2ヶ月が経とうとする頃に出張の延長を知らされた。時差の関係で電話はたまにしかできず、やりとりはメッセージやSNSがほとんど。最初の頃のこまめな通知は次第に減っていき、不安になったし寂しくなったりもした。
そんな不安な心に2度目の延長が知らされる頃に彼からエアメールが届いた。紙で届く手紙なんてずいぶんと久しぶりで、わざわざレターセットをあちらで手に入れたのかと胸が温かくなる。懐かしい筆跡を読み進めていくと、忙しさでろくに私の相手ができていないのを気にしていることや、出張はおそらくまだ長引くこと、早くこちらへ帰りたいことなどがしたためてあった。読んだあとにはこれまでの寂しさや不安がすべて凪いでいた。メッセージで同じことを書かれていてもここまでの安心感はなかっただろう。
その日のうちにレターセットを買いに行き、厚めの便箋を初めてのエアメールで送ったのも思い出してみるともはや懐かしささえ感じる。1年前に飛行機を見送った空港で今は飛行機の到着を心待ちにしている。
彼とのエアメールの何度目かのやり取りにはこう書かれてあった。
“帰ってきたら、大事な大事なことを言います”
心の準備はたくさんしてきたけれど、いまだに心は落ち着いていない。
6/25/2024, 4:23:40 AM