『これまでずっと』2023.07.12
これまでずっと、遠くからその姿を見ていた。尊敬は出来ないが、顔がとにかく好みだったのだ。
たまに話をすると案外、茶目っ気のある人だというのが分かる。面倒見がいいのか悪いのかよく分からないが、そんなところも気に入っていたりする。
初対面は彼が飲み物を買っていたときだ。彼が買おうとしたから、驚かせてやれという気持ちで、横からボタンを押した。
すごい顔をして見てきたがそれが痛快で、彼の表情を崩すことができて、少し嬉しかった。
同じ立場になると、彼は大人げないということがわかり、それも新たな発見であった。
こちらが飲み物を買おうとした時、彼の指がボタンを押した。
いつぞやの仕返しのつもりらしい。ざまあみろ、とでも言いたそうな顔をしていたので、いつものようにヘラヘラとした態度で返すと、彼はまたすごい顔をした。
彼はこちらより背が低い。その差にして十五センチ。わざと屈んでやると、彼は不愉快そうにする。
好みの顔でそんな態度をするものだから、ムワムワとした邪な気持ちが湧き上がって、わざとからかってやる。すると当然、彼は怒る。
そんな態度に、これまでずっと遠いと思っていた彼が近くに感じることが出来て、これまた痛快なのだ。
7/12/2023, 11:07:16 AM