「貴方が隣に居る。今この瞬間が、世界で1番幸せな時間が、永遠に続けばいいのに」
そう言った私を愛おしげに見つめて、少し困ったように笑いながら
「いつかは別れる時が来てしまうから、永遠は難しいけど。この命が果てるまで、僕はずっとそばに居る。離れたりなんてしないよ。」
「それは、嬉しいんだけど…そうじゃなくって、」
照れてしまって言葉が上手く紡げない。"その時"が怖い事が伝わったのか伝わっていないのか、少し考えて私の頭を柔らかく撫でてから。ちょっと待ってて、と言って手に赤いリボンを携えて帰ってきた。
「目印をつくるのはどう?たとえどちらかが世界から零れ落ちても。君が違う世界に居たって、僕が必ず見つけてみせるよ。だからこれをつけて待ってて。」
まぁ目印なんて無くても絶対探し出すけどね、なんて彼は言いながら私の髪は結ばれていく。貴方の暖かな手で、散らばった髪がするすると一纏めになっていくのがなんとも心地良い。
うん、似合ってる。何しても可愛い、って貴方の透き通る声が。耳元で聞こえるから。差し出された鏡の先で真っ赤なリボンで綺麗に髪は結われ、私は頬と耳も赤く染めて居る。
多分その事に気づいたのであろう彼はより一層表情を柔らかくしていた。どこまでも暖かくなる貴方の表情も雰囲気もずっとずっと愛している。
ぱちん、とシャボン玉が弾けるように。夢から覚めるのは突然だ。遠くて朧気で、それでも確かに存在していた幸せな記憶の追走。
懐かしさと愛おしさと寂しさと。全てを噛み締めながら、今日もあの日の赤いリボンで髪を結う。彼と自分とをまた結んでくれる事を祈って。
『はなればなれ』
11/17/2024, 8:54:49 AM