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わた雲が埋め尽くした曇り空は、街から光を奪いさっていた。押しつけるように重たく天井が近い。

道に並んだ枯れ木達は、無数に枝分かれしたまま空を仰いでいた。

 木枯らしが吹き付けて顔を刺してきたので、マフラーの中に顔を沈めるようにあごを引く。厚底のブラウンのロングブーツが、乾いた落ち葉をぱりぱりと踏みつぶした。

散らかったアスファルト、人通りのない真っ直ぐな道、乾いた空気、色素がなくなってセピア色の世界に足を踏み入れたようだった。

 一張羅でめかし込んだ、バーバリーチェックのマフラーだけが、色鮮やかに儚く浮いている。
 
寒さをごまかそうとコートの中に手を入れると、
携帯電話が振動した。彼からの通知だった。

 『ごめん。』
 『気付かなかった』
 『今電話できる?』

 私は既読をつけずに携帯電話をコートにしまう。
顔を上げると、視界を遮っていた枯れ木が無くなり、見慣れた角に差し掛かっていた。

 道を曲がると冷たかった冬の風が急に止んだ。
夕飯の準備をしているのかクリームシチューの匂いがする。
壁に立てかけられたハマーの黄色い自転車、
公園で遊ぶ子どもの声、陽が傾いた茜色の空。
 
 街は色を取り戻していた。

1/18/2026, 7:07:25 AM