ファンタジー
300字小説
長い『明日』
ガキの頃、竜人の俺には、人間の友達がいた。
近くの農村の男の子で、俺達は毎日のように森の入り口で待ち合わせ、森を駆け巡って遊んだ。
「また、明日な!」
夕刻になると奴は村に帰る。きっと明日も。そんな日が続くと俺は信じて疑わなかった。
「……長い『明日』だったな……」
あれからどれだけ経っただろうか。ガキの竜人が大人になるほどの月日を経て、俺はようやく森の入り口に佇む奴に再会した。
ゆらりと揺れる淡い影は傷だらけで、右腕と左足が肘と膝から無かった。
「……いろいろ、あったんだろうな……」
そっと影に手を伸ばす。
「あれから修行を重ねて、俺も一人前の僧侶になった。俺がお前をお前達の言う『天の国』へ送ってやろう」
お題「きっと明日も」
9/30/2023, 12:01:29 PM