たろ

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もしも、タイムマシーンがあったら?
夢のような夢物語。そう思っていた。
実際に起きたら、こんなに過酷だなんて思わなかった。

異世界にでも飛ばされたのかと思う程、同じ国の筈なのに聴き取れない言葉。
書いても通じず、話は理解されず、細かいニュアンスは伝わらない。
困惑が目の前に壁を作っていて、超えられない。
奇異の目を向けられたら最後、忌避する冷たい視線が刺さって、拒絶される。
「妖しか、物怪の類か?くわばら、くわばら。」
何とか聴き取れたのは、やはり拒絶だ。
誰も知らない場所で、独り取り残されたまま、呆然と途方に暮れるしかなかった。

居竦んだまま立ち尽くす。
足元をじっと見詰めていたら、大きな影がかかった。
「付いて来い。」
手を差し伸べるでもなく、抑揚のない声が頭上から降ってきて、すぐ脇を体格の良い人影が通り過ぎて行く。
「えっ!?わぁ、待って!」
大きな背中を急いで追い掛けた。

見知らぬ土地の見知らぬ人の背中を追い掛ける決断。
さて、吉と出るか、凶と出るか―――。


《タイムマシーン》
異世界転生もどき。
過去にタイムスリップしちゃう系の話に出て来る、モブちゃん現地到着の導入部分。

1/22/2024, 10:56:06 AM