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彼は言った。
「誇りは穢れないための標だ」
彼女は言った。
「誇りがあれば立ち上がれる」
あのひとは言った。
「誇りなんかに縛られたくない」
あのこは言った。
「誇りなんかじゃ食べていけない」
──ひどく、不思議なことに。
そのたった3文字は、人々の対立のもととなることもあれば、人々が協力するためのタネになることもあるのだという。目に見えないものなのに。手で触れないものなのに。舌で味わえないものなのに。
その3文字のために彼らは争い、血を流し、手を取り、傷を癒やしていた。
ならば。私にとって誇りとは、僕にとって誇りとは、俺にとって誇りとは、己の誇らしさ、というものは──。

8/16/2023, 12:37:41 PM