目が覚めると
(ワールドトリガー夢小説)
目が覚めると、枕元に誰か立っている。お馴染みの黒い隊服を辿って、顔を上げると唯我くんだった。寝ぼけた頭で、しばらくその顔をぼんやり見つめる。
「あ、あの、大丈夫ですか……」
「……うん」
私の体調が悪いのはいつものことで、みんな優しいけど心配などしないというのに。心底心配そうな声を出す唯我くんは、大袈裟だと思う。
「大丈夫……ちゃんと任務には出るから」
「無理しないでください」
「……ありがとう」
微笑み返せば、唯我くんは少しほっとしたようだった。心配されるのは、時に負担だ。大丈夫、と返すのが辛くて、消耗していくこともある。それでも、やっぱりほんのちょっとは心配してほしいなんて。私はわがままだろうか。今は具合が悪い。思考は沈み切っていて、欲張りな私に反吐が出た。
「僕に出来ること、ありますか」
唯我くんが自信なさげに呟く。正直、これは私の問題だから唯我くんに出来ることはなかった。唯我くんが私のために泣こうが笑おうが、私の気分はきっと晴れない。
「……もうちょっと寝かせて」
「すいません」
「謝らないで。ありがとう」
寝返りを打ち、唯我くんに背を向けた。1人にして欲しかったけど、背中から気配は消えなかった。気付けば意識を手放して、苦痛のない無意識の世界へ旅立っていた。
7/11/2023, 6:41:47 AM