怖い夢を見て目を覚ましたら、黒猫の「おこげ」が窓際で丸くなっていた。わたしが手を伸ばして真っ黒な背中に触れると、ぐるぐる鳴った。猫の喉音は格別だ。
呼吸で上下するおこげを数回優しく叩き、背に指を滑らせた。
とくん、とくん、おこげの脈が伝わる。
お日さまの光をたくさん浴びたおこげは温かかった。
風邪のせいなのか、心細さのせいなのか、いつもは知らんぷりしてるおこげがそばにいてくれるせいかわからないけれど、わたしはずびずびと鼻を啜った。
「おこげ」
三角の耳がこっちを向いている。
振り返らなくても、聞いてくれているんだ。
「ありがとね」
くぁ、とあくびしたおこげの牙が見える。
背を低くして丸まったおこげを撫でながら顔を向けた時計は、9時を示していた。
もう一回寝よう。
大丈夫、おこげと一緒だもの。
6/10/2024, 6:28:26 AM