風なんか吹いていないのにカーテンが揺れている映像が、不気味な音楽がついてテレビで流れる。優子はそれをみて肩を振るわせる。
そして隣に座っていた彼氏の肩をバンバンと叩いた。
「辰樹!辰樹!今の見た!?カーテンが、ひとりでに、ひらりって!」
「あーみたみた」
興奮気味の優子とは裏腹に、辰樹はスマホを片手に生返事を返す。それにほっぺをリスのように膨らませた優子は、ふんといってテレビに向き直った。
ちょうどテレビでは映るはずのない手が!なんて映像が流れている。それにまた軽く悲鳴をあげると、優子は辰樹の肩に飛び退いた。
「なんでそんな苦手なのに見るんだよ」
少し鬱陶しそうに言った辰樹に、優子はまたリスのような顔をした。
「別にいいじゃん!好きなの!」
「ふーん。こんな子供騙しが?」
「それがいいんじゃん!」
やや興奮した優子は今の映像のどこが作り物で、どこが本物で、どんな処理をして作ったのかなど語って聞かせる。
「だからね!さっきのは」
「あー、わかったわかった。俺が悪かったって」
手を挙げて見せると、辰樹は優子の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
そして何かにびっくりした顔をして、すぐ近くにあるカーテンを指差す。
「動いてるぞ」
そういうやいなや、カーテンがひとりでに動き出す。確かに誰も触れていなければ窓も閉まっている。
「嘘!?」
それに優子が驚きの声をあげれば、辰樹はケラケラと笑う。そして種明かしと言わんばかりに、にゃーと鳴いて一匹の猫が出てきた。
「なんだ……シロじゃん」
ふさふさの立派な尻尾をピンと伸ばした猫をみて、優子は心底安心した顔をする。
そんな彼女をチラリとみて、辰樹とシロは互いにウィンクし合う。二人ともよく似たイタズラ小僧の顔をしていた。
10/11/2024, 2:47:11 PM