ヤツメ

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最初は本当に苦手だった。

あなたはいつも周りを脅して恫喝して。
そのくせ気分屋で数分後にはころりと機嫌を良くして怖がらせてた相手に猫のように擦り寄る。
恐ろしくてたまらなかった。

そんなあなたが色白な肌を熟れた林檎のように耳まで真っ赤にして私を好きだと言ってきた時はまた誰かと共謀して私を貶めようとしているのかと思ったんです。
AM6時30分
毎日毎日あなたが私の家のささくれたオンボロな玄関の扉をノックする。
戸を叩く音で起こされた私は不機嫌になりつつもあなたが怖くて寝ぼけ眼で苦い笑いを浮かべ飽きもせず繰り返される愛の言葉と強く握りしめすぎてへたれてしまった一輪の花達を受け流していた。


ねえ先輩、本当に私はあなたが苦手だったんです。
あなたはいつも、周りを脅して恫喝して。
そのくせ気分屋で数分後にはころりと機嫌を良くして怖がらせてた相手に猫のように擦り寄る。
あの毎日もその延長線に過ぎなかったんですか。
毎朝飽きずにささくれた扉をノックするあなたからの愛を受けとめて四年の月日が流れました。

『オレ▓▓▓▓ちゃんのことが本当に▓▓▓▓なの、だからオレと▓▓▓▓▓▓▓▓』


AM6時30分
遠い日のあなたの潤んだ瞳と熱を孕んだ声で目を覚ます。
あなたが作った巣の中、数十分まで片側にあった温もりを私はもう探すことに疲れてしまったんです。
私は優しいから何も言いませんでしたけどこんな朝早くに人様の家の扉をノックするのは失礼なんですよ。自由なあなたはそんなこといってもどこ吹く風なんでしょうけど。

ツンと痛む目の奥、込み上げる汚い嗚咽。
口腔内に溢れるしょっぱい唾液でシーツが汚れないように唇を血が滲むほど噛み締める。

ねえ先輩、あなたって本当に飽き性なんですね。

#やるせない気持ち


8/24/2023, 5:17:46 PM