朱廼戯

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金魚を飼っている。名前はつけていない。
同居人が祭りから連れ帰ってきた小魚ちゃんは、フナ感満載で"ウオ"っぽくなった。手のひらよりはまだ小さい。

酸素ポンプのバッテリーは壁に干渉するとかなり耳障りだけど、ポコポコと泡の吹き出すところを見るのは好きだ。ゲーセンの二階建てになった小さめクレーンゲームでとれるような、シリコンのマスコットなんかをオブジェに沈めて、子供っぽい水槽に仕上がっている。

犬猫より手間もないし、明日お別れになっても多分泣かない。すべての命が横ばいの平等ではないし、だから私たちはきっと生き残れたのだろうし……。共に過ごす時間、生命を保証してくれるものへの依存。愛をつくるのはなんだろう。

私が金魚を見る時、私の中身は水槽に生まれる泡沫と、なんとなくいつも同じ速度になる。
金魚に感情があるかはわからない。私の感情もつまりそれが本当のところなんであるか、いつまでだってわからないまま。

金魚は人が近づくとパクパク忙しなくなる。私の脳内とか関係なくて、それくらい距離がある事実が安心をくれる気がした。

野菜入りの健康フードをがっつく金魚。良きかな、良きかな、元気かな。



「元気かな」

4/9/2025, 3:44:19 PM