覚えている
あの日、開け放たれたベランダから見た景色を、風に膨らむカーテンを
落ち行く貴女の姿を
落ちた後、洗濯籠には干し切れていない洗濯物がまだ入っていたことを
この場所で俺は貴女と同じ景色を見ている
一人暮らしをするようになって、初めて貴女の気持ちが分かった
ベランダから見る街の景色はとても汚かった
今になって貴女を許せる気がする
あの日、綺麗な姿でこんなに汚い場所に落ちていった貴女
逃げたつもりで、逃げた先で見世物になった
開け放たれたベランダの前で座り込む子供は、身勝手な怒りを持っていたけど、捨てられたと、役目を放棄して逃げたと思ったけど
今でも持っている あの日の新聞の切り抜きを
『母親 ベランダから飛び降りか』
2/12/2024, 12:29:15 AM