でぃぐだぁ

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「夢を見てたい」

この世界はモノクロだ。色がまるでない。
朝、目を覚ませばいつもの天井があって、体を起こせば見慣れた部屋がある。決まり切った手順で身支度を整え仕事へ向かう。それなりに作業をこなして、また同じ部屋へ帰ってくる。ただそれだけの一日。まるで歯車のように規則的に、決められた動きを繰り返す。すれ違う人々も、新しく上映された映画も、会社の友人でさえ、私の心を揺らすことはない。「想定内」その一言で終わってしまう。この世界には意外性というものが欠けている。否、世界というプログラムにはぎ落とされてしまったのかもしれない。だから私は夢を見る。私は夢で毎日違う人間になる。ある日は冒険家で自由気ままに旅をする。またある日は学生として机に向かう。魔法を操り、重力に囚われず空を自由に飛翔する日もある。その時間だけは、世界に色がある。何万通りもの人生を、夢の中で生きることができるのだ。けれど夢は永遠ではない。終わりが近づくと、決まって空を飛べなくなる。自由は少しずつ奪われ、現実が私を地上へ引き戻す。そして目が覚める。そこにあるのは色のない朝と歯車が回り出す音だけだ。江戸川乱歩は「現世は夢 夜の夢こそまこと」という名言を残している。夢の中にこそ、変わり映えのない世界に埋もれた本当の自分がいるのかもしれない。
だから私は、せめて眠っている間だけでも、夢を見てたい。

1/13/2026, 12:20:18 PM