【コーヒーが冷めないうちに、一息に】
「結婚してください」
僕が言っても、君はすました表情を崩さない。なんにも気にしてないみたいな顔で、コーヒーカップをソーサーから持ち上げる。
「熱っ!?!?!?」
だけどその実、自分が猫舌なことも忘れるくらいパニックになっていること、付き合いの長い僕は知っている。
「大好きです、僕と結婚してください」
コーヒーが冷めないうちに、もう一度言う。だってこのコーヒーが冷めたら、君の口はカップで塞がってしまう。そうして照れ屋な君は返事を誤魔化してしまう。
「……コーヒー、飲まないの? 冷めちゃうよ」
話を逸らそうとする君。
「君の返事を聞いたらね」
だってコーヒーを飲んだら、沈黙が埋まってしまう。君が口を開くまで、何も口にせず待っててあげる。
君と違って、僕は熱々のコーヒーが好きだから。コーヒーが冷めないうちに、どうか返事を聞かせて。
9/27/2025, 6:00:04 AM