人間は犬に比べたら嗅覚が劣っている。
しかし、私は全くの例外である。
人それぞれ違った香りを持っている。
いつからか、それらを嗅ぎ分けることができた。
授業の合間、あの人見つけた。
ちらりと見えた綺麗な横顔。
近い気がするのに、本当は遠いあの人。
あの人の第一印象は、花のような香りだった。
その香りは私を妙に狂わせる。
すれ違っただけでも、私が私らしく振る舞えなくなる。
実は人には言えない日課がある。
それは放課後にあの人の椅子に座ること。
そして残り香に満たされること。
見られることへのスリルさえも私にとっての快楽だ。
“ だからお願い、知らないでいて。
しばらくはこのまま居させてほしいの。 ”
そう呟き、香りと共に目を閉じた。
#花の香りと共に
3/16/2025, 12:09:27 PM