ゆかぽんたす

Open App

「良い式だったね」
隣で彼がお通しをつつきながら言う。そうだね、みんな喜んでくれて良かったね。私の言葉に彼はにこりと笑った。まだ飲み始めてそんなに経ってないのに頬が少し赤みを帯びている。
人生の一大イベントが今日行われ、私達は夫婦になった。挙式、2次会が終わってもうすぐ日付を跨ごうとしてる。緊張と興奮がようやく落ち着いて空腹を感じた私達は今、ホテルの近くの居酒屋チェーン店に来ている。
「俺すっごい緊張したけど、君はそうでもなかったよね」
「そう?」
「うん。堂々としてた。指輪交換の時なんか、危うく俺、落としそうになってたってのに」
「そうそう!あの時は私も笑いそうになっちゃったよ」
がっちがちに緊張してたもんね。真っ白いタキシードがこれまた笑いを誘うって言うか。格好良い姿のはずなのに最後まで慣れなかったなあ。
「すごく楽しかったな。幸せな時間だった」
「そりゃそうさ。これから先はもっと、君は幸せになってもらわなきゃ困るんだから」
「うん」
箸を置き、私にしっかりと向き直る彼はひどく真剣な顔をしていた。左手に光るリングが目に入る。あぁ、私本当に結婚したんだ。そのことをじわじわ感じてくる。嬉しくて、涙が出そうになる。
「改めて。今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ」
変な挨拶、と笑いながらもきちんとお返事をした。ほろ酔い気分で夫婦になった1日目の夜が過ぎてゆく。この人と、これから先一緒に歩いてゆく。それを思うとまた胸の奥底からドキドキするのを感じた。

1/22/2024, 9:18:13 AM