霜月 朔(創作)

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優越感、劣等感


貴方が嘗て、
私の恋人と恋仲であった事は、
私も知っています。

二人の関係は終わった。
今は只の友人だ。
幾ら、彼からそう聞かされても、
私より先に、彼から愛されていた貴方に、
私は劣等感を抱いてしまうのです。

だから。私は。
今は、私が彼の恋人なのだと、
態と貴方に見せ付ける様に、
彼の隣に寄り添う様に立って、
幸せそうに微笑んで見せるのです。

そして、私は、
優越感に浸る振りをして、
心の奥底に澱の様に揺蕩う、
劣等感を打ち消そうとして、
必死に藻搔き苦しむのです。

優越感、劣等感。
相反する二つの感覚によって、
私は焦燥感に駆り立てられ、
貴方を傷付けずには居られない程に、
追い詰められていくのです。

赦して下さい…とは、言いません。
私を憎んで下さって構いません。
そう。私の願いは、只一つ。
貴方に彼の心から、立ち去って欲しい。
…それだけです。

7/13/2024, 5:38:43 PM