【届いて……】感覚がなかった。手も足も頭も何もかも。薄れていく視界と意識。近付いてくる黒い影。わかっていた。息子が勇者になった日から。いずれこうなることは。それでも私は背中を押した。魔物がここを襲うということは。魔王にとって息子は危険だと認識されたのだろう。勇者として、立派に生きている証じゃないか。それならば。私が悲しむこともない。息子よ、戦い、そして生きろ。この想い、どうか届いて……。
7/9/2025, 8:38:16 PM