Ryu

Open App

こんな夜を過ごしてみたい。
都会の喧騒を離れて、まったりと流れるアウトドアタイム。
燃えて木が爆ぜる音、岸辺に寄せる水の音。
本当はこんな世界に生きていたことを、不意に思い出させてくれる。
何にも持たずに、ただ、灯火を囲んで、夜が深まるのを待つ。

悲しいことや辛いこと、きっと本当は忘れてしまえばいい。
こんな風に生きていれば、悩みなんて人生には必要ないのかもしれない。
ただ、当たり前に包まれて生きる。
当たり前の自然の営みに。
山の稜線をなぞるように、夕暮れの名残りがオレンジ色に染める。
またたく星達は、時とともにその数を増してゆき、ちっぽけな自分の存在を浮き彫りにしてくれる。
湖に映る星空。遠くきらめく街の灯り。

大丈夫だよ。
それでいいんだよ。
正解や間違いなんてない。
ただ、生きているんだ。
この星に、生まれてきたから生きているんだ。
正解も間違いもない。
たとえ今日がどんな一日でも、必ず明日はやってくる。
だから、大丈夫だよ。

焚き火の炎を見つめていたら、こうして自分を大切にしようと思えた。
職場の軋轢も、仕事や暮らしへの不安も自分を苦しめる。
でも、ここには何もない。
そして、何もない自分が本当の自分。
本来無一物。
じゃあ、何を捨てたって生きてはいける。
大切なものだけ残して、全部捨てたっていい。
この炎で、燃やしてしまってもいい。

「ま、どうせまた、気付いたらかき集めてるんだけどな」
ビールを飲みながら、お前が冗談めかして言う。
「そしたらまたここに来ようぜ。そんでこんな時間を過ごそう」
「いいね。好きだよ、こんな時間」

燃えて木が爆ぜる音、岸辺に寄せる水の音。
そして、大切な人と過ごす時間。

11/7/2025, 12:58:23 PM