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帰宅途中で百円ショップに寄り、以前から気になっていたLEDキャンドルを購入した。自宅に着くなりさっそく点灯すると、暖かいクリーム色の光が部屋を優しく包み込む。百円ショップといいつつ二百円商品だった事などどうでもよくなるくらいには綺麗だと思った。ぼーっと光を眺めていると、時々ゆらゆらと光が揺れて、まるで本物の蝋燭の灯りのように見える。
この灯りの下で読書をしたら風情があるなと思ったが、文字を読むには少し明るさが足りないかもしれない。それでもなるべく顔を近付けて読めば、出来ない事もない。そこで閃いた。同じキャンドルをもう何個か購入して並べれば、本を読むのに苦労しない程度の明るさは確保出来るはずだ。明るい部屋で読めば良いのでは?という正論は聞かないものとする。

翌日、再び百円ショップに足を運ぶと同じキャンドルを三個程購入した。前日に購入したキャンドルを含めた、合計四個のキャンドルが私の周りを取り囲む。まるで怪しい降霊儀式をしているかのような光景となった。床に置いたのが間違いだった。
気を取り直してキャンドルをテーブルの四隅に並べると、本を開き中央に置いてみた。「読める、読めるぞ!」などと、思わずどこぞの悪役じみた台詞を吐きながら本を読み進めていく。
気が付くと空は薄っすらと明るくなり、いつの間にか時刻は夜明け前だった。時間を忘れてこんなに何かに没頭したのは久しぶりだな、としみじみ思う。

ここまで長々と綴ってきたが、勘の良い人間ならこの話にオチが無いという事に気付いている頃だろう。貴重な時間を無駄にしたと、暴れまわってくれても構わない。
机の上の物を全て落とし、棚から本を叩き落とし、服をビリビリに破り捨てた後に我に返った貴方にある商品をおすすめさせてほしい。
百円ショップにて二百円で購入出来るLEDキャンドルである。暖かいクリーム色の光がきっと貴方の心を癒やしてくれる事だろう。

9/14/2024, 6:40:41 AM