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あの日の温もり

"ピー"
ドアが閉まります次の電車にお乗りください
"バタン"プシュー"
"ガタンガタン、ガタンガタン"
これで私は駅のホームに着いてから3本目の電車を見送った
「はぁはぁはぁ」
一歩たりとも動いてなくても息が切れてしまう
恐怖で体が震えてる、握ってる手提げかばんの持ち手がシワだらけになってしまっている
東京の朝の電車は人が多い、人間恐怖症の私が来て良い場所ではなかったと後悔する
「あっ」
思い出す、固まっていた手を緩めてかばんの中から小さなお守りを取り出す

「ほらこれ、あんたが大好きなワンちゃんのぬいぐるみ」
「なんで?」
「なんでってなによ、上京祝いよ」
私が今日から住む新しい一人暮らしの家の玄関で母親が可愛らしい小さなワンちゃんのぬいぐるみを差し出してきた
「うん」
私はお返しに両手を差し出してぬいぐるみを迎い入れた
母親はその手の中にぬいぐるみを置いた
「あっ」
温もりを感じた、母親の愛を感じた
「じゃあもう行くからね」
「あっありがとう、頑張るね」
「うん、、」
母はすぐに顔を背ける
そして出て行ってしまった
何かを言おうとして何かの感情に阻まれたように見えた
『いつでも帰ってきていいからね』
去っていったあとにそういったLINEが母から届いていた

"テレレン"テレレン"
電車がが来ます白線の内側まで下がってください
"プシュー"
「よしっ!」
私はお守りのぬいぐるみの温もりに背中を押されて電車の中へと入った

2/28/2025, 11:38:47 AM