「無題」
先を急ぐ君へ。
――小さな四つ足の旅人へ。
私の一年は、
君にとって四年なのだという。
君はいつだって急ぎ足だ。
嬉しさも、寂しさも、愛しさも、
短い命の鼓動へぎゅっと詰め込んで、
とことこ、とことこ、
まるで時そのものを追い越そうとするみたいに。
眠る顔はあどけないのに、
その時間だけは残酷なほど速く流れる。
気づけば白くなる口元。
ゆっくりになった足音。
それでも君は、
今日という一日を全力で愛している。
だから私は願うのだ。
どうか急がないで、と。
もう少しだけ、ここにいて、と。
私の一年を、
君の四年で駆け抜けてしまわないように。
柔らかな毛並みに触れる夜も、
名前を呼べば尻尾を揺らす朝も、
そのすべてを、
永遠の手前で抱きしめていたい。
先を急ぐ君へ。
愛している、では足りないほどに。
5/11/2026, 8:18:31 PM