忘れられない、いつまでも。
季節はまた、私を置き去りに過ぎてゆく。
公園で、貴方と一緒に線香花火をしたのは、まだ5月のころ。
あの時は、まだ早いのにって思ってた。
その、半月後。
貴方は天国へと、旅立った。
今日で、あの線香花火をしてから丸一年経つ。
私はまだ、ぼうっと手元を見つめていた。
声がした。
「ここでね、兄ちゃんが好きなひとと、最後に花火をしたんだって。それも、一年前の今日」
顔をあげると、小さな男の子が、女の子に話していた。
「うちの兄ちゃんさ、カッコつけだから、最後まで自分の寿命のこと、好きなひとにも言わなかったんだって」
――――。
「ひどいよな、兄ちゃん。残されるほうの身にもなってほしいよ」
そういえば、彼は年の離れた弟がいると、言っていた。
まさか。
「でも、言ってたんだ。最後は、笑った顔を想い浮かべて、終わりたいんだって」
気持ちが、溢れる。
その時、時間を知らせる音楽が鳴った。
「あ、そろそろ帰ろっか!」
男の子は、嵐のように目の前にきて、嵐のようにいなくなった。
あまりにも、身勝手な貴方。
そんなだから、忘れられないの、いつまでも。
5/9/2024, 9:56:52 PM