未来の鍵というものを拾った。
そして目の前には、見覚えのない一枚の扉が佇んでいた。おそらくこれが未来の扉なんだろう。
扉は鍵と同じでガラスのように透明で、青い宝石が埋め込まれている。
僕は鍵穴に鍵を差し込んだが鍵を回さなかった。いや、回せなかった。
漠然とした恐怖が僕を包み込み、そこから僕は行動に移せなかった。
そして鍵穴から鍵を抜き取り、僕はまた何もしないまま、扉から離れた。
それを何度も何度も繰り返した。僕は未来を知りたくても知ることが怖かった。きっと受け入れられないに違いないから。
大切な人が、この世からいなくなっているという現実を僕は認めたくないからだ。
この鍵を拾った日が彼女の余命宣告を聞いた帰りなのは、はたして偶然なのだろうか。
そして未来への扉が置かれるこの廃校が、僕と彼女が初めて出会い、共に学園生活を送った思い出深い場所なのも、、
神様がいるとしたら、何故僕にこんな使えない鍵を渡したのか聞きたいものだ。
題名 拝啓、未来を知りたくない僕へ
1/11/2025, 6:30:09 AM