瑪瑙

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僕は朔が好きだ。
僕は月が嫌いだ。
折角の漆黒の夜に明かりを灯す、あの月が嫌いだ。
だから、僕は、月光がない朔が好き。

僕は、自分の名前が嫌いだ。

“朧”

龍から、すぐれた人になるように。
月から、優しい光で包み込むような人になること。

僕の名前の由来。
馬鹿げているだろう?

朧には、月が曇ってぼんやりしたさま、だとか、物の姿がかすんではっきりしないさま、という意味がある。
僕は、一生、曇っているんだと、この名前から突きつけられるような気がする。
だから、僕は僕の名前が嫌い。
そして、月も嫌い。
曇っている月なら、無い方がいい。
僕の名前を決めていいのならば、朔がいい。

月のように優しい光で包み込めるような人でもない。
龍のように優れている訳でもない。
じゃあ、僕は一体何者なのだろう?

僕は誰よりも、ずっと、月が嫌いだ。
そして、誰よりも、ずっと。朔を待ち望んでいる。

4/9/2024, 10:33:32 AM