三日月

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Kiss

 好きでもない人とするキス。

 何処か満たされないけど、安心する私がそこに居る。

 好きでもないのに求めてしまう。

 これはどうしてなのだろう?

「ねぇ、私のこと好き?」
「うん……」

 その問いかけに対して、彼は目を合わせようとせず、俯いたまま返事をした。

 何処か寂しい感じがするけど、帰り際、また会う約束をしてしまっまたのは何故だろう?

「じゃぁ。また暇になったら連絡するよ」
「分かった……連絡待ってるね」

 連絡は私の都合じゃなくて、彼の都合に合わせる。

 こんなんでイイのかと言われたら駄目だと思うけど、でも今の私には、私の存在を肯定してくれるのが彼なのだ。

 此処が私の居場所……周りからしたら間違ってるって思うだろうけど、でも、本当に此処が居場所。

 だから、今も彼とキスを繰り返す。

「ねぇ、私のこと好きになってよ?」
「好きだよ!」

 また目も合わせず答える彼。

「今日は、泊まってもイイかな?」
「……」
「あ、やっぱり困るよね……」
「イイよ!」

 少し困り顔で答えてるのが見て分かった。

「ありがとう!」

 それでもイイよと言ってくれたのでまたキスをする。

 そう、私は都合のイイ女なだけ……。

 それでも今は此処が居場所だから、もう少しだけ……この関係を続けていこうと思っている。

――もう少しだけ……。

―もう少しだけ私とキスをしてください。

 
――三日月――




 

 

2/5/2023, 1:37:21 AM