300字小説
世界の終わりに望むこと
「明日世界が終わるなら、おねえさんなら何をします?」
バイト先の和菓子店のショーケース越しに可愛らしい女の子が訊いてくる。
「私達はずっと食べたかった、この店のお菓子を思いっきり食べるの」
そう言うと女の子は小銭をじゃらじゃらと出して季節の大福を幾つも買っていった。
「……ここにあった祠、壊したんだ」
バイトからの帰り道。随分前から老朽化で立ち入り禁止になっていた祠が壊され、廃材の山になっていた。
「子供の頃はよく雨宿りしてたなぁ」
古びて黒くなっていたが、中には山野に遊ぶ子供達を描いた額縁が飾られていたはずだ。
「……」
額縁が割られ廃材の上に置かれている。薄れた子供達の絵の口には餡子の小豆の粒が着いていた。
お題「明日世界が終わるなら」
5/6/2024, 11:18:56 AM