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『ゆずの香り』

彼女とすれ違ったとき、ふわっと、柑橘家の香りがした。
その爽やかで甘い香りに思わず振り返る。
去っていく彼女の長い髪から、微かな残り香が香る。
(香水、変えたのかな……)
昨日まではシトラスの香りのする香水をつけていたはずだ。
私はバッグから香水の小瓶を取り出し、手首に振りかける。
私の手首から、彼女と同じ柑橘の香りがした。
(ふふ、これでお揃いだね)
昨日の夕方、彼女は雑貨屋でこの香水を買っていた。
私も今日の朝、その店に立ち寄り、同じものを購入したのだった。
私から同じ香りがしたら、私が彼女のストーカーだってばれちゃうかな。
そんなことを考えながら、今日もゆずの香りを纏う彼女を目で追う。

12/23/2024, 8:13:28 AM