Ryu

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ベランダで、アイスを食べていた。
マンションの六階。
街を見下ろす。
今日も暑いな。太陽の熱が半端ない。
食べるより早く、アイスが溶けて消えそうだ。
どうせ溶けるなら、胃の中で溶けてくれ。

昨夜、妻と喧嘩した。
ゴミ出しルールで意見がぶつかって。
今頃はまだ、寝室のベッドで爆睡中だろう。
さて、コーヒーでも淹れて、ご機嫌取りに伺おうか。
今日から僕も妻も夏休みだ。
つまらない意地の張り合いで、せっかくの休日を無駄にしたくない。

「あー勝手にアイス食べてる。どれ食べるか、二人で決めるって言わなかったっけ?」
読みが外れて、起こしに行く前に妻が自力でベッドから脱出してきた。
窓を開けてベランダに出てこようとして、動きを止める。
「無理。こんな暑い中、よく外にいられるね。熱中症になるよ」
…確かに。アイスはすでに溶けきっていた。

今年の夏も暑いな。
今からこんなんじゃ、12月になったらどれほど…熱で頭をやられているようだ。
「ゴミ出し行ってくれた?昨日私が言った通りにやってよね」
はいはい。すべては君の言う通り。
「…何?何か不満?」
そんなことないって。
ただね、アイスがすでにふたつほど減ってたなーって…言わないけどね。

さて、この猛暑の中、今日はどこへ行く?
君と一緒ならどこへでも…言わないけどね。
「えーこの暑いのに出掛けるの?いいじゃん、家でのんびりしてようよ」
そうきたか。まあ想定内。
夏の君の生態も、何となくは把握できてきた。
付き合って三年。結婚して一年。
生活をともにするってこーゆーことなんだな。
昨夜の喧嘩をまるで引きずっていない君も、想定内。

まあとりあえず、減ったアイスの補充はしなくちゃ。
これがないと君の機嫌が悪くなる。
たとえ君がこっそり一人で在庫を減らしてるとしても。
たかがアイスで君と僕の楽しい夏休みが約束されるなら、冷凍庫をハーゲンダッツでいっぱいにするのも悪くない。
そして毎日、君とアイス三昧。
そんな夏休みになりそうだな。

二人が、楽しいと思うことを、楽しもう。
ただいま、夏真っ盛り。

8/4/2025, 10:03:08 PM