シンビジウム

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【ありがとう、ごめんね】

「一緒にいて、よかった?俺と組んで」
「当たり前。これだけ一緒にやってきたんだから。…ごめんね、巻き込んで」
「巻き込まれたなんて思ってない。俺が自分で選んだ道だから」

強い言葉を使いながら、自信はまったくなかった。
それすらも見破られているような気がする。
でも、罪悪感はもってて欲しくない。

「一人で死ぬ勇気なんてないからさ」
「それは、俺もだよ」
「じゃあ、一緒に死ぬ運命だったのかもね」

薄く笑いながら躊躇なくつぶやく。
運命なんて言葉は嫌いだけど、それしかないような感覚が呪いみたいで気持ち悪かった。

「僕のこと刺してよ」
「後悔、しない?」
「しないよ。するわけない。自分が後悔すると思うなら、やめてほしい。それに、僕が後悔するって思うのもやめて」
「…わかってる。わかってる、けど」

言葉が詰まった。
止めたいのに止められない。
より自分が助長しているような。死への階段を二人で駆け下りて行くような。
無力さに沈みそうだった。

「…ためらわなくていい。僕自身がいいって言ってるんだから」
「…じゃあ、いくよ」
「今までありがとう。…ごめんね」

振り上げられた刃物を見上げて、目を閉じた。
                       fin.

12/9/2024, 9:59:39 AM