「だから、一人でいたい。」
君はそういって寂しげに笑う。
見たことがない顔だった。私が教室で本を読んでいる時にも話しかけてくるいつも笑顔な君とは違っていた。
いつも君は皆の輪の中にいて、楽しげな顔をしている。
少なくとも皆と話している君は幸せそうだ。
なのに何故?
そう思った矢先、君は私の心を見透かしたようなことを言う。
「目に見えるものが全てじゃないってよく言うでしょう?私もそれの1つってだけ。」
それを聞いた時、私に一つ疑問が湧いた。
「ならなぜ君は皆にそう伝えないんだ?君が言えば皆、快く承諾してくれるだろうに。」
そう言うと君は笑った。
「あっはは!確かにね!その通りだと思う。 けどね、話しかけてくれる人が居るのって嬉しいことでしょう? 皆から“自分の話を伝えたい人“、いわゆる“何かを共有したい人“の一人に当てはまっているの、名誉なことじゃない?だからなるべく一緒にいたいと思ってるんだよ。」
「それに、伝えちゃってあっちが遠慮し始めちゃったらちょ〜っと気まずいかなってさ!」
そう言って笑う君は、君は、
「優しいんだね。」
私がそう言うと君はまた、悲しげに笑う。
「どこが〜?自分の意見すら真っ当に言えない人間だよ〜?私のことを好いてくれている子に。これってある意味裏切りな気もするよね〜」
「だからね、一人でいたいの。一人でいたら寂しいけど楽に感じるから、」
少しの静寂が流れた。
そこでまたずっと思っていたことを一つ質問をする。
「…なぜ君はそれを私に質問したんだ?私は君とあまり関わることもないのに。」
君は答える。
「だからこそだよ。だからこそ貴方に、貴方だけに言ったんだ。」
俯いていて顔が見えない。今君はどんな顔をしているんだ。
君の考えていることが分からない。
「てか、私の事優しいって思える君が優しいんだよ〜?」
君は顔を上げて話す。
少し冗談混じりに言う君の笑顔はいつもと同じはずだった。
8/1/2024, 3:01:38 AM