『またいつか』
※BL 死別と自死
別れの言葉も何もなかった。
何も言わずにあいつはいなくなってしまった。
朝あいつが目を覚まして、目覚めの挨拶をして、俺が作った朝食を一緒に食べながら、来月のお前の誕生日は旅行に行こうと誘って、あいつは嬉しそうに絶対だよ、と笑って約束をしたんだ。
仕事で行けなくなったなんて許さないからな、そう言って無理矢理俺の手を引っ張って、指切りなんて古くさいことまでさせられた。
それなのに、一緒に出かけている最中、事故に巻き込まれてあいつだけが死んでしまった。
あの日からもう三年経ったが、俺の心は三年前に止まったままで、あいつのことを忘れることも思い出にすることもできないままだ。
時間が薬だと、悲しみは時が癒してくれると誰もがそう言うが、三年経っても俺の悲しみも喪失感も絶望も、何一つ癒えることはない。
生きていてもあいつに会うことはもうかなわない。この悲しみを抱えてあと何十年もの時間を一人で生きるのは俺には耐えられない。
またいつか、あいつに会える希望でもあれば良かったのに。
7/22/2025, 5:05:43 PM